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大型野生動物の管理システムの構築 ~クマ,シカ,イノシシとの共存を目指して~

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大型野生動物の管理システムの構築 ~クマ,シカ,イノシシとの共存を目指して~ の初日に参加してきた。うちの6代目代表が頑張ってtwitterで完全に実況中継していたので、いまさら何を書いても、と思いつつ一応、会場で打ったメモをblogにも挙げておくことにする(twitterは#jugainoko)。会場での公演のほかに個人的に思いついた関連事項を混ぜ込んでいるため、講演内容とは少し違います。youtubeなどでも公開するということなので、正確な内容を知りたい方はそちらの参照をお願いいたします。

昨今、獣が爆発的に増加するなかで、人と獣との軋轢をどう解決すべきかという大きな課題がある。今回のシンポジウムは我々「野生動物との闘争的共生」を担ってきたトップバッターの国内外の専門家を招き、日本と欧州の取り組みを比較するとともに、今後日本がどうしていくべきなのかを議論する。「保護」以上に「管理」という部分を強く打ち出した、農工大だからこそできるシンポジウムであると強く感じた。


日本の狩猟と野生動物管理の変遷と現状

一般的に日本人は農耕民族であると考えられているが、本当にそうだろうか。近代までアイヌは狩猟を生業としていたし、東北を中心としたマタギの文化がある。西日本ではイノシシ猟が脈々と続いている。少し歴史を振り返ってみると、江戸時代には、狩猟は特権階級だけが行う行為であり、原則禁猟だった。それでも、山間部では獣害対策のために銃を借用できる制度があり、農民が獣を撃っていた。その後、明治維新が訪れるとそれまでの禁猟の反発で乱獲や事故が相次いだ。これに伴い、鉄砲取締り規則(1872)といった法整備が一気に行われた。さらに、戦時中には軍部による毛皮の供給のための捕獲が各地で行われた。これは学校で毛皮確保のためのウサギ飼養が推奨されたことに重なる。そして戦後には、保護政策が中心となり、1950鳥獣保護区 1963鳥獣保護法が整備される。こうして野生動物の保護が中心となった現在、我々は野生動物による逆襲を受けている。現在、獣害問題に立ち向かうために、主に二つの施策がとられている。

1999特定鳥獣保護管理計画制度 
・都道府県による科学的管理計画・財政的な支援はほとんどない・低迷

2007鳥獣被害防止特措法
・市町村による防除や駆除に補助金・被害防止計画を作成するための専門知識・技術は確保されていない
・形は作っても、捕獲の担い手がいない

制度は作っても、保護管理の担い手をどう育成していくのかが大きな課題である。では、捕獲の担い手をどうするのか??
一般狩猟者の数を維持しつつ、地域に根付いた専門的捕獲技術者を育成、配置、雇用する必要があるだろう。ただし、狩猟者人口の減少と高齢化に伴い、一般狩猟者に依存する現在の制度は崩壊する可能性が高いため、専門的捕獲技術者と一般狩猟者を分けて考えるべきだろう。まずは、各都道府県や道州制ごとに教育拠点を作る必要がある。行政・研究機関・大学が連携してハンティングスクールを設置してはどうか。さらに、二つの期間に分けて対策を考える必要があるだろう

phaseI:短期的に個体数削減 緊急的に組織された民間団体で対応、技術に習熟した一般狩猟者の利用、同時に人材の育成を行う。
phaseII:中長期的な持続的管理 新たな担い手による管理。公有林の技術職員、森林組合、捕獲業者(民間)などが担い手になれないか。


クマ類の管理と現状

クマは1940年代まで狩猟資源として利用されていた。さらに、明治以降には外貨を獲得するために一部地域では過度な捕獲が行われる。このようなことから、主に西日本では地域的な絶滅や分布の縮小が起きてきた。一方で近年、クマと人の軋轢が生じており、東日本では絶滅回避と被害防除・西日本では絶滅回避を目的とした保護管理計画が策定されている。特に、2004年以降は顕著な大量出没と大量の駆除捕獲が起きておりクマの個体群の維持と被害の抑制という二つの相対する課題に取り組まねばならない。クマとの軋轢としては主に、農林業被害・人身事故・精神的被害があげられる。地域レベルでは、人身被害を最小限にするのが前提であり、大量出没時に顕在化するクマ出没への対応、被害防除対策支援といった事業展開が必要だ。広域的レベルでは、そもそもの目標のモニタリング体制の混乱が起きている。継続可能なデータ収集ができていない。クマの行動に対して、どのようなスケール設定で対応していくのかが不明確である。適切な調査法とは何なのかが分からず、推定原理と推定手法が統一されていないのが現状であり、検証可能な方法がないことからクマの個体数変動は正確にモニタリングできない。
兵庫県ではそのようなクマの対策に先進的な試みを行っている。専門家(森林動物専門員)の雇用と拠点の設置を行っており、さらに被害と補殺の両方を減らすことを基本方針としている。広域から寄せられる目撃情報を一元管理し、社会的な不安に応えるデータを提示する。さらに、対応判断の根拠を常に示している。例えば、カキの木をなくすとクマの出没は大幅に減少することを生態学的背景をもとに客観的に示し、被害の情報収集を即座に対策につなげている。



ニホンジカの管理の現状と課題

人とシカとの歴史は捕獲、保護、爆発的増加の三つの期間からなる。
1940年代には過剰捕獲が起き、禁猟政策がとられた。その結果、1990年以降にシカは爆発的に増加し現在もその勢いをとどめることがない。1994年以降に、ようやくメスジカの捕獲解禁され、1999年には特定鳥獣保護管理計画が策定されたが、シカの管理の歴史は、まだたった12年あまりであり、始まったばかりであるといえる。
過去25年でシカは70%も分布を拡大し、全国の自然公園の半分で自然植生被害が発生している。この理由はオオカミの絶滅、拡大造林と牧草地の造成、狩猟者の激減、耕作放棄地の激増、暖冬など様々な物があるが、このような問題はどれも北半球の各国に共通だろう。

人の手による個体数管理の問題点として個体数の過小評価・フィードバック管理ができていない・広域管理の仕組みが欠如していることがあげられる。このため、野生動物の管理には、管理計画策定、管理の実行、モニタリングの実施、計画評価を繰り返す順応的管理が何よりも重要であり、試行錯誤を繰り返すしかない。ただ、これまでの経験から我々が学んだことがある。それは、保護の成功が個体数の増えすぎにつながることや、不確実情報(生物の正確な個体数は絶対にわからない)に基づく管理にはモニタリングが必要であること、個体数は過小評価しがちであるために予測通りの捕獲数では増加を抑制できない事態が間々発生すること、メスジカの強度捕獲によって個体数削減は可能であることなどである。さらには、広域と地域の二つの視点による連携が必要であり、これらを担うための狩猟者の維持と捕獲従事者(専門家)の育成が早急に望まれる。



イノシシの管理の現状と課題

かつてイノシシは本州以南に広く分布していた。しかし、明治・大正期にイノシシが激減した。これは、急激な人口増加に伴う土地利用の変化(焼畑・薪炭林)、野生動物の捕獲の解禁に伴う乱獲などによると考えられる。その後、イノシシは分布を回復させてきている。これには様々な要因が影響している可能性が考えられるが、捕食者の欠如(明治時代にオオカミの絶滅・間接要因)、積雪の減少(一部地域では影響しているかもしれない)、捕獲の規制、土地利用の変化(広葉樹林伐採から4-50年経った薪炭林や耕作放棄地の増加、竹林の放棄)によるかもしれない。日本では、エネルギー革命に伴い、薪炭林の放棄され自然に植生が回復してきている。また、農業の効率化が米の自給率を高めた結果、減反政策がとられて水田放棄地が増加したほか、農作物の輸入規制緩和に伴って果樹園の放棄が起きるなど、人間が農林業のために利用していた空間を獣に明け渡してきた歴史がある。

イノシシの獣害対策として、特定管理計画が33程度の都道府県で策定されている。しかし、実際には行政資料の整理が中心であって、生態学的な情報の利用や、どう現場の管理に生かすのか、といった視点が欠如している。考えてみると、そもそもイノシシにとって好適生息地は日本全土に非常に多い。捉え方を変えれば、イノシシの生活圏に人間が割って入って農業をしているのが日本の現状だといえる。そのため、被害をなくすためにはフェンスをつくる、補殺することでバッファーゾーンを守ることで人間領域と自然領域の区域わけ(ゾーニング)を行うしかない。

イノシシの管理において忘れてはいけない視点として、一年に多回出産すること、初期死亡率が非常に高いことがあげられる。イノシシは基本的に一年中発情しているのだが、何らかのイベントによって発情が止まることがあるという生物であるため、繁殖時期の大きな年変化や繁殖回数の年変動が想定される。そのため、ある時点での個体数のみにこだわることは、誤った管理を促す可能性があり、危険だと考えられる。このため、詳細な週齢査定技術の普及が望まれる。イノシシの無発情期間を把握すれば、生存時間解析にかけることができるため、直接的に個体数の正確な変動を予測することができる。



とりあえず、そのⅠでした。
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2012年01月24日 | Comments(0) | Events
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